増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査
各論
2.生化学検査
ノート 腎機能マーカーの有用性と活用の仕方
宮田 敏男
1
1東海大学医学部腎・代謝内科
pp.1115-1121
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101064
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増加する腎臓病と社会背景
日本の透析患者数は,世界第2位であり(人口当たりでみると世界1位),世界透析患者の約1/5が日本にいる.一方,日本の腎移植数は欧米に比べ圧倒的に少なく,ここ数年増加していない.日本の高齢化に伴い透析患者もますます長期化・高齢化してきた.驚くべきことに,透析の予備軍である慢性腎臓病患者は予想以上に多いことが日本腎臓学会の調査で明らかとなった.わが国の約36万人分の健康診断などのデータを評価・推計した結果,日本人の約2千万人あまりが既に糸球体濾過値(glomerular filtration rate,GFR)60ml/分未満,うち480万人あまりが50ml/分未満と推定されることが2005年の日本腎臓学会総会で報告された.増加する腎臓病の背景には,高齢化に伴う高血圧(腎硬化症),糖尿病(糖尿病性腎症),肥満などのメタボリック症候群の増加が指摘されている.
高度蛋白尿を呈するネフローゼ症候群などの例を除いて,慢性腎臓病の多くは自覚症状をあまり示すことなく進行する.腎臓機能低下に伴う症状は,腎臓機能の約2/3以上をなくした場合に初めて尿毒症として発現してくるが,腎機能がまだ過半数保たれているときは全く症状としては出てこないので,腎臓病はなかなか気づかないことが多い.しかし,後述するように,この段階で既に腎臓の形態・機能の障害はかなり進行している.
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