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はじめに
データベースといえば,単にデータを保存した格納庫だと思い浮かべる人が大部分であろう.データの格納庫という意味では,WordやExcelの文書ファイルやデジタルカメラで撮影したjpeg画像を記録したパソコンもデータベースといえてしまう.しかし,一般的に,このようなファイルを集めただけのフォルダはデータベースとはいわない.確かに,データベースは,データを保存した格納庫であることは間違いないが,そこには関係性や整合性などの制約の下に整理された構造,高速に目的の情報を取り出すことができる機能と仕組みを持って初めてデータベースといえるのである.
身近にあるデータベースとしては,インターネットを利用した飛行機の予約システムなどがある.指定した日付と行き先とを指定すれば,世界中どこからでも,一瞬のうちに空席状況が検索でき,予約と座席指定まででき,おまけに,チケット購入までできてしまうのである.これは,航空会社が持つ,顧客情報,フライト情報,予約情報を一元管理し,インターネットからの入力と空港カウンターからの入力とを同時に受け入れるシステムが存在するからである.また,チケット購入に関しては,クレジット会社とのデータベースの連携で成り立っている.データベースは見えないところで,いつの間にか生活には欠かせない便利な機能として活躍してくれている.
医療現場で私たちが使用している電子カルテや検査情報システムなどはまさに,データベースを利用しているわけであるが,その本質を理解して利用しているユーザは,一握りしかいないのが現状である.蓄積したデータを有効に利用できて初めてデータベースとしての利点が発揮されるのであるが,自施設のシステムのデータベース構造すら知らない状態ではないだろうか.これからの臨床検査技師(以下,技師)は,顕微鏡を使いこなすのと同様に,データベースを自由に使いこなして,知識発見や効率的な業務の遂行のためのエビデンスの抽出などを当たり前にできる人材となるべきである.この領域の能力を持てば,現在市販されている医療情報システムの問題点や医療が抱える問題点がみえてくるはずである.
今回から12回のシリーズで実践医療データベース論の執筆を担当することになった.このシリーズでは,リレーショナルデータベースの導入から,設計,利用,応用までの流れで解説し,特に,臨床検査との接点部分を強調して解説していきたい.
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