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はじめに
「パソコンで使えるデータベースは?」と聞かれると,多くの人がAccessと答えるだろう.Windows95の発売以来,AccessがOffice製品にバンドルされたため,一般ユーザにもデータベースアプリケーションをパーソナルで活用する環境が整い普及し始めた.しかし,最近,Office製品にAccessがバンドルされてないバージョンがパソコンに標準搭載されることが多くなり,Accessが使える環境を持ったユーザが少なくなっている.このことが,一般ユーザでデータベースを使いこなせる人材が育成されない一因と考えられる.具体的には,Microsoft Office Personal EditionとMicrosoft Office Standard EditionにはAccessは付属しておらず,Microsoft Office Professional Editionにだけ付属しているため,購入時にどのアプリケーションプログラムが付属しているのか気がつかないユーザが多いようである.
一方,データベース教育でAccessを利用するのはお薦めできない.Accessのグラフィックユーザインターフェイスを用いたクエリ(データベースへの質問)の作成法に慣れてしまうと,複雑なクエリを組むことができなくなってしまう問題がある.Accessのクエリ画面から「SQLビュー」を使って,SQL(Structured Query Language)で問い合わせを記述することもできるが,インタラクティブに操作するには使いにくい面がある.また,AccessのSQLはプログラミング上の正規表現ではない,いわゆる「方言」が強く,バージョンの互換性にも不安がある.
今回は,Accessのような有料のソフトを利用せず,無料のソフトを利用して演習環境を構築する方法について解説する.パソコンを使って安価にデータベースを利用する方法は多数あり,本稿で紹介するMSDEやPostgreSQLなどが代表的な選択枝である.少し勉強すれば安価にデータベースの演習環境を整えることができる.本稿では,データベースのエンジン部分にMSDE(Microsoft Data Engine)を用い,SQLのユーザインターフェースとして,CSE(Common SQL Environment)を利用することにした.
なお,データベースソフトには,IBM社のDB2,Microsoft社のSQL Server,Oracle社のOracleなどがある.また,ファイルメーカー社のFileMaker Proも多く利用され,非常に使いやすいソフトであるが,データベースとしての制約が不十分なため,今回の主題のデータベースを学ぶという目的にはお薦めできない.
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