臨床検査技師のための実践医療データベース論
第8章 検査データベースの構築
片岡 浩巳
1
1高知大学医学部附属病院検査部
pp.769-774
発行日 2005年8月1日
Published Date 2005/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100095
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はじめに
本章から,実践医療データベース論の最大の目的であった検査データベースについて解説を進めていく.
検査データベースの利用目的は,円滑な検査業務の遂行にあるが,もう一つの重要な目的に,エビデンス創出のための多角的な情報検索の実現がある.これには,その情報検索に適したデータベースの設計を行うことが必要である.しかし,一般的な検査室に導入されている臨床検査情報システムは,多角的な情報検索に耐えうる設計は行われていない.各種の情報検索を高速に行えるようにするには,データベースの利用目的を明確にし,その目的に合った最適な設計を行うことと,データベースの運用方法に対しても,厳しい制約を設ける必要がある.例えば,数値型の連続値の検査結果項目の場合,テーブルの中に報告用の文字型フィールドと検索用の数値型フィールドとを同時に持たせることである.この設定により検査値の数値比較が高速に実行できる.また,定性値と定量値といった複数の表現形で検査結果を入力したいのであれば,新しい検査項目を増設する必要があり,マスターの保守を徹底して行うことが重要である.
本章では,どのような検索要求にも耐え,日常検査業務にも利用可能な検査データベース構築のための基本的なスキーマの設計事例について紹介する.さらに,このデータベースを利用して,第9章で解説する予定の各種集計業務やTAT分析,そして,第10,11章で解説する予定の感度特異度やROC分析について,SQLを用いて短時間で解くことができるデータベースの設計を行うことを目標とした.
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