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TH1細胞への誘導と自然免疫系
アレルギー疾患の病態は個体が全体としてTH2優位の状態にあり,TH1側への誘導がうまく行われていない状態にあると考えられている.侵入した病原体に最初に接触するマクロファージや樹状細胞のTLR(Toll-like receptor),特にTLR2,4は病原体のリポ蛋白質やLPSなどのパターンを認識しIL(interleukin)-12を産生し主にTH1細胞を活性化し個体の免疫系をTH1側へと誘導する(図1).感染初期に駆動する自然免疫系の応答はTH1細胞の分化・誘導に重要であることがわかってきた(33巻9号832-833頁参照).
TH1と TH2分化への要因
アレルギー疾患や自己免疫疾患など多くの疾患がTH1/TH2のバランスの崩れに起因することがわかってきた.TH1またはTH2を活性化する因子を表に示す.特に最近の清潔な環境がTH1/TH2バランスを破綻しアレルギー疾患を増加させている原因の一つであるとする考えが支持されてきた.特に幼児期における結核菌など微生物への感染頻度の減少がTH1反応を低下させTH2反応を優位に誘導していると考えられている.結核菌の抽出抗原に対するツベルクリン反応はTH1細胞による遅延型反応であり,陽性反応はTH1反応が強く誘導されたことを示す.そして,ツベルクリン反応陽性者は陰性者に対してアレルギー疾患率,IgE反応性やTH2細胞が産生するサイトカイン(IL-4,IL-10,IL-13)のレベルが優位に低く,逆にTH1細胞が産生するサイトカインであるIFN(interferon)-γの有意の上昇が見られる.最近の抗菌剤の使用もTH1反応を弱めTH1/TH2バランスを崩すとの考えも支持されている.2歳までの抗生物質の経口投与歴がアレルギー疾患率を高めているとの報告がある.これは,抗生物質の経口投与は腸内細菌フローラを破壊するからであり,乳酸菌,ビフィズス菌の重要性もわかってきた(表).また,抗原提示細胞が提示する抗原ペプチドの量とアミノ酸配列がTH1とTH2の分化に影響を与える.抗原提示細胞上に多量のペプチドが高密度で提示されるとTH1に,少量のペプチドが低い密度で提示された場合はTH2に誘導される傾向がある.また,アミノ酸配列によりTCR(T-cell receptor,T細胞受容体)に強く結合するペプチドはTH1への分化を,弱く結合する場合はTH2に誘導する傾向がある(33巻10号922-923頁参照)(図2).
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