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最近の汎用生化学自動分析装置による免疫学的測定には,免疫比濁(turbidimetric immunoassay,TIA)法やラテックス免疫比濁(latex immunoturbidimetric assay,LIA)法を原理とする試薬が用いられている.これらの試薬を利用する場合の注意点の一つにプロゾーン現象がある.本稿では,われわれが過去に行った若干の検討結果を基に自動分析装置におけるプロゾーン現象検出のメカニズムを紹介し,検出が困難な場合の対策についても述べてみたい.
■プロゾーン現象
抗原抗体反応において,抗原または抗体のどちらか一方が過剰のために反応が抑制される濃度領域が現れることを,地帯現象(zone phenomenon)といい,抗体過剰による反応抑制領域を前地帯(prozone),抗原過剰による場合を後地帯(postzone)というが1),両者を区別せずプロゾーン現象(prozone phenomenon)ということが多い.図1に示したように,抗体量が一定のときの抗原濃度と吸光度との関係は,最適比を頂点とする上に凸の曲線となる.通常,抗原を定量するときの反応の場は抗体過剰領域である.この領域のスロープはS字状となるが,感度が高く吸光度が直線的に変化する部分,すなわち濃度C1からC2までの箇所が検量範囲として利用される.抗原濃度が最適比を超えると抗原過剰により吸光度は減少に転じる.これが臨床検査でいうプロゾーン現象である.目的成分の臨床的にありうる最高濃度Cmaxが,検量範囲上限の吸光度Ec2(=Ec3)まで低下する濃度C3より低い場合には,検量上限値より外れた高値検体を希釈して再測定すればよい.しかし,Cmaxが図のようにC3より高い場合には吸光度が検量範囲であるEcpz(=Ecmax)まで低下する検体が存在する可能性(測定値の潜り込み)があるので,プロゾーン現象の有無を確認(プロゾーンチェック)する必要がある.プロゾーンチェックが実施できない場合には検量範囲の上限濃度をC2から測定値の潜り込みを考慮した濃度であるCpzまで下げる必要がある.
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