シリーズ・医用基礎工学入門・3
電気・1
金井 寛
1
Hiroshi KANAI
1
1上智大学理工学部
pp.311-313
発行日 1985年3月15日
Published Date 1985/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917466
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電気特性とインピーダンスとアドミタンス
生体の電気特性としては,①心電・脳波などの生体電気の発生(能動的性質)と②物体としての電気特性(受動的性質)とがあるが,ここでは受動的な特性だけを考える1,2).生体の受動的特性は,体表面で測定した生体電気から発生源の状態を正確に推定するために重要であるが,受動的特性自体が生体の状態を反映するのでいろいろな目的で測定される.また,生体の電気に対する安全を考える場合や治療を目的として電気を生体に加える場合にも,重要なデータとなる.
医用生体工学では多くの場合,電圧や電流が時間とともに正弦的に変化する正弦波交流を用いる.正弦波交流をいろいろな電気素子に加えたとき,素子の両端の電圧と素子を流れる電流との関係を図1に示す.図1—aに示す抵抗の場合は電圧と電流とは時間的に同じように変化するが,コンデンサーの場合はbに示すように電流が電圧より一周期の1/4だけ進んで変化する.コイルの場合は反対に電流が電圧より一周期の1/4だけ遅れる.直流の場合は抵抗だけを考えればよいし,電圧・電流としては大きさだけを考えればよいが,交流の場合には大きさだけでなく,電圧と電流の時間差も考えなければならない.正弦波交流の場合,時間の代わりに周期Tを2πとして角度で示すほうが便利で,この角度を位相と言い,時間差に相当する角度差を位相差と呼ぶ.また,電圧電流の大きさは,振幅ではなく,実効値(瞬時値の二乗平均の平方根でrms値とも呼ばれ,正弦波では振幅の1/√2)で示すように決められている.この大きさのことを絶対値と呼ぶ.直流では電圧γと電流1の関係は0hmの法則
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