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はじめに:本シリーズの目的
近年工学的にきわめて高度な医用機器が開発され,臨床の場で広く使用されるようになり,いまやこれらの機器無しには近代医療は行えない状態になった.臨床検査においても,生理機能検査はもちろん,臨床化学検査の分野にも高度な医用機器が導入されている.これらの機器は診療の基本的データを提供するのであるから,つねに信頼性高く安全に運用されなければならない.また,これらの機器は一般に高価であり,能率良く稼働しないと医療費の昂騰を招くことになる.しかし,これらの機器は,対象が患者であることもあって,家庭電気製品のように,何の知識も無しに取り扱えるようにすることはできない.したがって,これらの機器を安全に,信頼的高く,能率良く稼働させるためには,取り扱い者はある程度の工学的知識を持っていなくてはならない.医用機器は今後も,さらに高度に,さらに多量に医療の場に導入されるようになると思われる.一方,医療や臨床検査の仕事をするためには,ただでさえ,相当広い分野の学問を相当に深く勉強する必要があるので,さらに医用機器についての勉強をしなければならないのは相当の負担となると思われる.従来から医学教育で行われているような,一つ一つの機器それぞれについて勉強するような方法では,とても今後の発展に追いついてゆくことはできないと思われる.工学では,共通な基礎的事項から体系的に勉強を進めてゆくので,将来の発展に対しても比較的容易に追いついてゆくことができる.
本シリーズではこのような現状認識に立って,医用生体工学を体系的に理解するための第一歩として,生体の特性について解説する.もちろん臨床応用のための学問であるから,臨床応用の例を挙げながら,比較的容易に理解できるように配慮するので,ぜひお読みいただきたい。
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