今月の主題 臨床診断のロジック
技術解説
発光法による15N分析法
木村 廣子
1
Hiroko KIMURA
1
1女子栄養大学栄養学科食品栄養学
pp.506-511
発行日 1983年5月15日
Published Date 1983/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917438
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初めから話が横道にそれるが—かれこれ10年以上も前のこと.今はなき生化学のオーソリティー吉川春寿先生(東京大学名誉教授,前女子栄養大学副学長)の研究室の向かいに,私どものささやかな研究室があって,しばしばお茶の時間(ティーセミナー)にお招きを受けたりした.その折,吉川先生から,第二次世界大戦前の1939年ごろすでに,放射性同位体(RI)に先んじて,安定同位体(SI)を用いた代謝研究が,Schönheimerらによりなされていたこと,さらに,この論文に啓発されて吉川先生は放射性同位体を用いる生化学研究の道へ入られた由うかがった.安定同位体はヒトへも利用可能なことや,放射性同位体とは別の情報も得られ,近い将来,必ずやSIをトレーサーとしての利用研究が盛んになるだろうという予測も述べられた.
当時,同位体と言えば放射性同位体のことと(恥ずかしながら)理解していた私は,興奮にも似た興味を覚えた.中でも,蛋白質代謝の動態を窒素を追跡して行う場合,利用可能な同位体は15Nをおいてほかにない(表1)ことを知り,ことさらに興味深く,前述のSchönheimer,Rittenbergらの15Nを用いた蛋白質代謝の研究(Studies in protein metabolism)は,耳学問ながら長く記憶にとどめていた.
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