今月の主題 臨床診断のロジック
総説
臨床診断のシステム論的考察
古川 俊之
1
Toshiyuki FURUKAWA
1
1東京大学医学部医用電子研究施設
pp.513-520
発行日 1983年5月15日
Published Date 1983/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917439
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はじめに
近年の臨床診断が著しく厳密性を増したことは,何びとも疑わないところである.しかし考えてみると,これは観測の精度化によるものであって,診断の論理過程そのものはなんら変化も進歩もしていない.その意味では診断学は学問として進化の行き止まりにある.この指摘は一見暴論のように聞こえるかもしれないが,医師の診断ロジックは単なる標本照合にすぎず,標本照合の技術が論理表や枝分かれ図以上に出ないのが事実であり,しかも今後とも新規な技術の実現は望めそうにない.その打開策は人間の思考過程の欠点を,機械によって補強する以外はない.このことはコンピューター診断の研究者が永らく夢想してきた目標であるが,コンピューター科学の発展はその夢が現実化する可能性を高めてきている.以下,医師の診断思考について考察し,診断学の教科書の史的分析によって裏づけたうえで,現在の問題点と今後の進路について私見を述べた.
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