Senior Course 病理
症候と病理組織検査(2)—浮腫—概説
三友 善夫
1
1東医歯大・病理
pp.205
発行日 1971年2月15日
Published Date 1971/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917315
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浮腫(むくみ)をもって最初に気づかれる疾患は決して少なくない.浮腫は臨床的には皮下浮腫を指すことが多いが,病理学的には各臓器,組織の過剰な液体の貯留状態をいい,細胞外,血管外の組織間隙,漿膜腔(肋膜腔,腹腔,心嚢など)に液体が多量に存在する.この浮腫状態を組織像として把握するのは必ずしも容易ではない.通常は肺胞腔,粗な結合組織の間隔,脳の血管周囲の粗な組織に淡桃色(H・E染色)に観察される.最近,体液,腎,心,肝,内分泌臓器などの病態生理学が発達して,浮腫発生のメカニズムもしだいに明らかにされているが,まだ不明な本態性浮腫と呼ばれる病態もある.浮腫は浮腫発生の初発部位,程度,存在分布部位一顔面,上下肢,全身性,尿の回数,量,性状などから調べ,血漿タンパク濃度と検尿タンパクの有無,腎機能検査(濃縮,稀釈試験,PSP試験,腎クリアランスなど),心,肝,内分泌臓器の機能検査によって原因疾患が追究され,確認される.
すべての組織は体液の移動によってその機能が維持され,体液は血液の循環,電解質とタンパク質の含有組成,血管内外の平衡によって正常状態が保たれている.その移動は毛細血管内皮細胞と組織との間で行なわれ,細胞膜の透過性が重要な役割を果たしている.すなわち,血漿と組織間液の間の交流には毛細血管内圧と血漿の膠浸圧の拮抗作用(Starlingの法則)の存在が明らかにされ,水と食塩の貯留から細胞外液と血漿循環量の不均衡を招き,腎性から心性浮腫を生ずる.
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