技術解説
リステリアの細菌学
尾形 学
1
OGATA MANABU
1
1東京大学農学部家畜微生物学教室
pp.24-30
発行日 1964年1月15日
Published Date 1964/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916711
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はじめに
リステリア菌(L菌)といっても,おそらく一般にはあまり親しみのない菌種名であろうし,またリステリア症(L症)とはどんな病気か関心を持たれた方も少ないと思われる。事実,わが国ではヒトの症例は1958年,伊藤ら(1959)1)によって髄膜炎の症状を呈した小児の髄液から本菌が分離され,ヒトのリステリア性髄膜炎と診断されたのが最初で,今日までにわずかに6例を数えるのみである。しかしながら,この疾患は鳥類,動物では決して珍しいものではなく,1948年,田島(1950)2)が札幌でヤギの脳炎に際し,病理組織学的に本症であることを推定したのが最初で,1951年には旭ら3)が本邦で初めて本菌を分離し,以来1962年までの15年間に,家畜の罹患したもの総計146頭(ヒツジ85,ウシ14,ヤギ46,ブタ1)に及んでいる。1926年,Murrayらによって本菌が発見されて以来,本菌の感染は広く各種動物(少なくとも36種の動物)にわたり,その報告も広く各国,約30ヵ国からなされている。諸外国においては本菌の培養方法が確立されるに伴って,特にヒトの感染例が相次いで証明されるようになり人畜共通の伝染病として多くの関心を集めているのが現況である。
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