特集 血液検査の問題点
12 リンパ球の取り扱い方
小野 三郎
1
,
長谷川 仁
1
1名大・第1内科
pp.917-927
発行日 1968年12月1日
Published Date 1968/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916547
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はじめに
末梢血液の白血球を臨床上問題とする場合には,その量的変化と質的変化の2つの面が考慮されるべきである。白血球には,大別して胞体内に特殊顯粒を含有する顯粒球(好中球・好酸球・好塩基球)と,そのような顆粒をもたず単一の核を有する細胞,すなわち単核白血球(リンパ球・単球)との2群があることは周知のとおりである。
顆粒球,わけても数のうえで白血球の大勢を占める好中球は,生体の炎症反応の1つとして,いろいろな疾患で増加するし,また各種の条件下において疲へいし減少するものである。つまり,量的変化をきたしやすい細胞である。ところが,本稿で取り扱うリンパ球は数の増減が比較的起こりにくい,その意味では,恒常性に富んだ細胞群であることが従来より知られている。もちろん,リンパ球増多や減少が認められる疾患も確かに存在するのであり,その個々については成書にゆずるとして,ここで考えなければならないことは,このような量的に比較的安定な細胞群であればあるだけ,われわれの目を質的変化に向けなければならないということがいえよう。この質的異常について論ずることができるためには,その前提として,正常の姿というものが明確に規定されていなければならない。以下に,われわれがリンパ球を取り扱っている立場を,すこし説明してみたい。
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