技術解説
クライオスタットマイクロトーム—薄切法とその組織学的検査への応用
下里 幸雄
1
,
砂田 みな子
1
1国立がんセンター研究所第3組織病理研究室
pp.799-803
発行日 1967年11月15日
Published Date 1967/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916245
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はじめに
外科病理,病理解剖にたづさわる者でも,凍結切片といえば卓上にとり付けたマイクロトームと炭酸ガスをまず思い浮べ,"Cryostat microtome"は酵素組織化学的研究や螢光標識による抗元抗体反応といった免疫組織化学的研究などに必要なものと思いがちである。しかし1960年頃より,これが手術時の迅速凍結切片診断だけでなく,手術材料の診断に,さらにまた,解剖材料の組織学的診断にさえ使用され始め,外国のある病院では病理組織診断のための重要な位置を占め,パラフィン包埋は診断困難な症例や組織の永久保存のためにのみ用いられている。
外科病理における手術中の迅速診断の目的は治療方針の決定である。したがってできるだけ短時間に確実な診断を下し,麻酔時間の不必要な延長や,診断不能による再手術を極力避けなければならない。このための必須条件は,パラフィン切片に劣らない美しい標本をきわめて短時間に作ることである。もちろん,従来の炭酸ガスとサルトリウス型凍結切片用マイクロトームを使用する方法で多くの場合目的は達せられるが,この方法の最大の欠点は,薄切後一度は水槽に移さなければならないことで,この結果,壊死物質や水に可溶性の物質が脱落することである。このような部分的欠損を伴う標本は病理診断のための最良の標本とはいえない。
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