技術解説
濾紙と尿試験紙
小延 鑑一
1
1京都大学病院中央検査部
pp.793-798
発行日 1967年11月15日
Published Date 1967/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916243
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I.はじめに
臨床検査の一部門として尿成分の化学的分折があるが,これは普通検尿と呼ばれ広く実施されている簡易検査である。現在の臨床化学分析は各種の分析機器が導入され,自動化,高能率化,高精度を目指しているが,一方ではなんらの機器をも用いずに試験紙や錠剤やあるいは簡単な検出試薬のみにて行なうところの簡便,迅速および微量を目的とした分析方法も急速に発展し,緊急検査やスクリーニング検査に広く用いられてきている。
尿の試験紙とは尿中の成分を濾紙上にて各種の検出試薬を駆使して,特異的に鋭敏迅速な定性ないし半定量の反応を行なうことを目的としたものである。すなわち濾紙に尿をつけると水分の吸収拡散に従って溶質が濾紙上に固定されるのを巧みに応用した分析法であり,その溶質の確認限界は通常の溶液での分析では到達しえない鋭敏度を有している場合があり,その上反応の確実性もかなり高い。そしてこの濾紙上にて検出反応を行なうことにより容易にえられた利点の一つは保護層効果protective layer effectともいえるものがある。それは適当な検出試薬をしみこませて乾かした濾紙を適当なマスク剤で表面をカバーすることにより,濾紙上に塗布した検体中の妨害物質の影響をさけることができるのである。この効果を利用したものに血糖用試験紙のデキストロスティックスがある。
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