特集 日常検査法の基礎知識と実技
細菌学
各種臨床材料の細菌検査の要領—結核菌の薬剤耐性測定法
高橋 昭三
1
1東京大学細菌学
pp.1123-1128
発行日 1965年12月10日
Published Date 1965/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915839
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臨床材料として提出されるものはいろいろであるが,提出の目的は,すべて病原菌の有無を確認する報告を早く得たいことである。
細菌検査の一つの特色は,全くの病原菌,たとえば腸チフス菌などを,臨床材料から証明した場合は,その他の症状,所見がどうであっても,患者はその菌の感染症と診断が確定することである。検査の結果は,その他のどんなデータよりも重大なことが多いのである。尿から淋菌を検出した場合もそうである。他の所見の如何を問わず,患者の淋菌感染症の診断が確定する。これは時には患者の人格を左右することさえある。また,反対に,腸チフス菌,淋菌の検出に失敗し,確認ができず,陽性であるべきものをみのがした場合には,他に患者が発生する可能性,つまり家族をふくめて他の人に伝染する機会が生じうる。検査技術者のおわねばならない責任の重さを考えねばならない。すなわち,技術者が責任ある報告を出すことは,時には人の人格をまもり,時には何人もの人を,伝染病からすくうこととなる。その逆の場合には,人身傷害をおこしうるということである。検査には,どれほど慎重を期しても,すぎることはないが,無駄な時間を費してはならないことがわかろう。
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