Medial Hi-lite
薬剤耐性—結核菌を中心として
T
pp.58-59
発行日 1965年10月10日
Published Date 1965/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203488
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最近某医師から「この春新発見の結核患者にSM・PAS・INHの併用を試みたが,いっこうに病状が好転しない.きくところによると抗結核薬耐性菌の感染も多いというが,そのためだろうか」という問い合わせをうけた.おそらくそんな理由ではないかと答え,耐性菌の検査をするようにすすめておいたが,たしかに耐性菌感染の問題はゆるがせにできない問題である.
ある特定の薬剤を長期間使用していると,その薬剤に対して抵抗力をもった菌が発現してくることは,かなり古くから知られていた.結核でもその点はひとしく,以前から予防法適用患者の使用薬剤決定については,薬剤耐性の有無を重視することになっているが,10余にあまる抗結核薬のいずれもが,薬剤耐性に対する態度がそれぞれ違っているし,一般的なSM・PAS・INHだけをとりあげても,その検討も決して容易ではないため,ともするとなおざりにされやすい.しかしその結果発現した耐性は,その後も固有の形質として子孫に引きつがれたり,他へ伝達されたりするようであり,先の例にあるように新発生患者で,今までなんら抗結核薬を服用してきた経験がないのにかかわらず,耐性菌が証明されるということにもなるのである.これらの事実は結核の治療計画に大きな支障を与える.
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