新しく検査技師になる方へ
実感的衛生検査技師論,他
舘野 捷子
1
1東京大学・中央検査部
pp.195-200
発行日 1965年3月15日
Published Date 1965/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915729
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
学校を卒業した当初は誰しも,相当な期待と抱負をもって就職するのではないかと思います。とくに検査の仕事の尊さとむずかしさについては,学校で,くりかえし聞かされていますので,責任の重さに「やせる思い」を体験するのが普通でしよう。検査室の仕事をするようになって,学校時代の友達などと会いますと,申し合せでもしたように,数限りない失敗談が語られます。誰さんは患者さんの耳たぶを裏側まで切ってしまったとか,培地を滅菌せずに,全部シャーレにまいてしまったとか,検体を結果のでるまでまたず,処分してしまい,後で,青くなったり赤くなったりしてしまったとか。
しかし,病院臭といいましょうか,検査室臭といいましょうか,そういった臭いが,身体や衣服にしみこんで,検査室から家にもちかえったノートですら,「妙な臭いがするよ」などと家の人からからかわれたりするころになりますと,仕事にも少しずつなれてきます。そして検査の仕事などというものは,案外単調なものだといったような,不遜な自信めいたものがでてくるのです。ある人は,単調でつまらないから仕事はやめるといって退職するし,またある人は,われこそは天下の衛生検査技師と胸を張るといった具合にです。
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.