今月の主題 生理検査・2
技術解説
大動脈脈波伝播速度の測定法
吉村 正蔵
1
,
林 哲郎
1
,
古幡 博
2
,
長谷川 元治
3
1東京慈恵会医科大学・第4内科
2東京慈恵会医科大学・ME研究室
3東邦大学・中央検査部(第Ⅲ部)
pp.1007-1012
発行日 1979年10月15日
Published Date 1979/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915219
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本邦の死亡順位の最上位を占めている脳卒中,心臓発作の大部分は動脈硬化症を原因としている.これら疾病の予防と治療のためには発症前に動脈硬化を的確に診断することが極めて重要である.動脈硬化症は従来,病理学的な概念であるが,物理的な動脈壁そのものの剛性,硬さが増大したものという考え方に立脚して,動脈硬化症の程度,硬化度を定量的に測定する方法が考究された動脈壁の硬さを知るために脈波伝播速度(pulse wave velocity;PWV)測定法がある.生体での動脈壁弾性特性を測定するうえでの必要条件は,①血管運動神経の影響を無視しうること,②血圧の影響に対する補正,③病理組織学的所見と一致する裏付けがまず挙げられる.臨床的にルーチンの検査法の条件としては,更に無侵襲的であること,動脈壁の微細な変位を的確に捕らえ記録できることが加えられる.脈波速度測定法は,該当動脈2点間の平均的・空間的な弾性特性をみるための無侵襲的測定法の一つである.
著者らはヒト大動脈の脈波速度を測定することにより,生体の大動脈壁硬化度を非観血的,定量的に診断する大動脈脈波速度測定法,PWV測定法を確立し,臨床応用してきた1).大動脈硬化は脳動脈,冠動脈,腎動脈などの主要臓器動脈硬化に先行する5)ため,大動脈硬化度の定量はこれら臓器動脈の硬化の予知手段として臨床上の意義は大きい.
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