呼と循ゼミナール
脈波伝播速度—その物理的意義
福嶋 孝義
1
,
東 健彦
1
1信州大学医学部第1生理学
pp.958-959
発行日 1979年9月15日
Published Date 1979/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203426
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動脈における圧力脈波の伝播速度は循環系の力学を考察するとき重要な物理量の一つである。また,臨床的には脈波伝播速度の計測は有力な診断情報の一つとなっている。脈波の伝播速度を与える式としてはMoensの式がもっと有名である。Moensの式は,血管壁のYoung率E,血管の半径と壁厚すなわちrとh,および血液の密度ρを用いて,c=√Eh/2rρと書かれる。この式はYoung (1809),Weber, E. H. (1850), Weber, W. (1866), Resal (1876)らの研究を通じて1876年にMoensの実験およびKortewegの理論的研究によって確立されたものである。式の導出にあたって,動脈血流は薄肉管内の非粘性流体の流れとしてモデル化されており,各研究者のとった方法は岡のテキスト1)およびNoordergraffの総説2)に詳しい。脈波伝播速度に及ぼす血管壁の厚さ,壁粘弾性,血液の粘性などの影響は1950年以降,多くの研究者によって検討されてきたが,臨床的応用すなわち実用という立場から観たとき,脈波伝播速度はMoensの式で十分である。
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