今月の主題 血中薬物濃度測定法の進歩
技術解説
抗菌薬
中山 一誠
1
Issei NAKAYAMA
1
1日本大学医学部第三外科学教室
pp.1466-1472
発行日 1988年11月15日
Published Date 1988/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913830
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抗菌薬の体液内濃度測定法の歴史はペニシリンGの登場により,その製剤検定と同時に濃度の測定を目的として生物学的測定法(bioassay)が確立された.特に重層法(vertical method)はわが国において,鳥居・川上両博士により開発されたため,鳥居・川上の重層法と一般的には呼ばれている.また,化学的定量法(chemical assay)に関しては,多くのサルファ剤の誘導体が合成され,その測定方法としてBratton-Marshall法が開発された.その後,測定方法も種々の変遷を経て,現在最も普及したのが高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である.
抗菌・抗生物質の血清中濃度を測定し,治療効果を促進するばかりでなく,副作用の発現を阻止しようとする考えは古くからあったが,血清中濃度を迅速に測定する方法が皆無であった.しかし近年にいたり,①機器分析の発達による測定方法の開発,②RIA,EIAの導入,③コンピュータの進歩,④薬物動力学の臨床応用など,開発が急速に進み,血清中濃度のモニタリング(therapeutic drug monitoring;TDM)の臨床応用が可能となった.
抗菌薬の体液内濃度測定は,臨床応用に際して投与量と有効濃度との関係,投与間隔および副作用との問題より重要である.最近の傾向としてはある1点の血清中濃度を測定し,薬物動力学のコンピュータ導入により,その薬剤の運命を推定しようとする試みである.すなわち,population pharmacokineticsと呼ばれる手法であり,期待がもたれる.
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