特集 アイソザイム検査
II.各論
33 トリプシン
森 治樹
1
Haruki MORI
1
1東京女子医科大学附属第二病院内科
pp.1430-1433
発行日 1988年10月30日
Published Date 1988/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913824
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はじめに
臨床医にとって,腹部臓器の中で膵疾患ほどいまだ確診的検査の少ないものはないといっても過言ではない.食後に生じる心窩部痛,時に激痛発作,背部痛,下痢,特に脂肪便などの特徴的症状ももちろん必発ではなく,その臨床所見は多彩である.最近,膵疾患の診断技術も進歩し,診断に用いられる手技も少なくはない.逆行性膵管造影,膵液分泌機能検査,膵液細胞診,Ultrasonography,CT,血管透影,生検などがあるが,いずれも一長一短があり,特に炎症性の膵疾患の診断には,あまり効果的ではない.したがって,尿,血液検査などの臨床検査が重要になるわけである.重症の膵炎は急性に進行し,全身性,特に循環,呼吸,腎臓など多くの臓器の障害を発生し,致死的となることがある.また慢性の膵炎,慢性反復性膵炎などでは,臨床症状に乏しく,症状の把握が困難である場合が少なくない.
いずれにしても膵炎診断の場合,まず鑑別診断として,そしてまたできるだけ早期に重症度,経過を予知しえ,治療,経過の指標となるものであることが望ましい,これらの血液生化学的マーカーの中にアミラーゼ,リパーゼ,ホスホリパーゼA2,エラスターゼ,トリプシン,キモトリプシン,カリクレインなどがある.
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