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血小板はエネルギー産生系として解糖と呼吸を備えており,静止時の形態維持や活性化時の血小板機能に必要なATPを供給する.中でも解糖とグリコーゲン分解がエネルギー供給の主体である.
解糖の流れはin vitroでは細胞外グルコースと酸素に依存し,グルコース添加は乳酸産生の増加と逆に酸素消費の低下をもたらす(Crabtree効果).酸素の欠乏状態,あるいはミトコンドリアでの酸化的リン酸化を阻害した状態は乳酸産生を増加させる(Pasteur効果).血小板はグルコース存在下では解糖のみで必要なATP量を維持できるが,グルコースが欠乏するとグリコーゲンの分解のみではATP量を維持できない.解糖系はグルコースから,あるいはグリコーゲンからグルコース1—リン酸を経て,グルコース6—リン酸の生成により始まる.グリコーゲンの分解は非活性化時にはほとんど観察されず,活性化時またはグルコース非存在下のみに限られる.血小板にはAMP依存性・非依存性のホスホリラーゼが存在し,後者はホスホリラーゼbキナーゼにより活性型に変化する.このキナーゼは血小板ではカルモジュリン依存性にCa2+により活性化される.一方グルコースからグルコース6—リン酸への変換はヘキソキナーゼにより触媒され,これは解糖系の律速酵素の一つである.グルコース6-リン酸からさらに10の酵素反応を経て乳酸が生成される(表)1).多くの酵素反応は平衡状態にあり,解糖系の調節には関与していない.律速酵素の中でもっとも重要な働きをもつのはホスホフルクトキナーゼであり,血小板ではこの反応は平衡定数から104もかけ離れている.この酵素はフルクトース6-リン酸,無機リン酸,cAMPで活性化され,逆にATP,クエン酸,水素イオンで不活化される.またピルビン酸キナーゼも律速酵素の一つと考えられている.
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