わだい
慢性肉芽腫症の食細胞酵素異常—O2—生成系の病態生化学
田中 寅彦
1
,
石村 巽
1
1慶応義塾大学医学部医化学教室
pp.1408
発行日 1988年10月30日
Published Date 1988/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913818
- 有料閲覧
- 文献概要
好中球,マクロファージなどの食細胞は,細菌などの異物の貧食時に多量のスーパーオキシドラジカル(O2—)を生成する.このO2—や,さらに派生して生じる種々の活性酸素種(過酸化水素(H2O2),ヒドロキシラジカル(OH・),一重項酸素(1O2),次亜塩素酸イオン(OC1—)など)は,食細胞の殺菌作用に中心的な役割を果たしている.このO2—生成活性を遺伝的に欠損した疾患が慢性肉芽腫症(chronic granulomatous dis—ease;CGD)である.患者の食細胞は,カタラーゼ陽性でH2O2非産生性の細菌や真菌に対する殺菌能が低く,患者は乳児期より重篤な感染症を繰り返す.本稿ではCGDの病因であるO2—生成酵素系の異常について簡単に述べる.
O2—は食細胞の細胞膜に存在するNADPHオキシダーゼと呼ばれる酵素系により生成される.この酵素系はふだん静止状態にあるが,食作用時や可溶性刺激剤(ホルボールエステル,脂肪酸など)の投与により活性化され,次に示す反応を触媒しO2—を生成する.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.