原著
エネルギー代謝からみた卵細胞の物質代謝—酵素的サイクリング法の応用
堤 治
1
,
佐藤 和雄
1
,
木下 勝之
1
,
坂元 正一
1
Osamu Tsutsumi
1
1東京大学医学部産婦人科学教室
pp.627-633
発行日 1982年8月10日
Published Date 1982/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206673
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1978年Steptoeによる世界最初の体外受精児の誕生1)以来,いわゆる試験管ベビーが,その臨床応用の是非を含めて大きな話題となっている。試験管ベビーは,体外受精の研究の卵管不妊に対する臨床応用の一つであるが,卵が成熱し排卵受精を経て着床に至る過程は生殖生理の原点であり,その研究は不妊不育症あるいは受精阻止法の研究ともなり,さらに発生異常すなわち先天異常発現予防の基礎的研究ともなりうるわけで,産婦人科学の基礎,臨床の面から最も興味深い分野の1つである。
卵が母体外でも生存しうるという事実として,哺乳動物卵の卵割分化が血漿培地で起こることが観察されたのは,1910年代のことであった。以後多くの研究者たちによって,卵の培養に必須な物質が解明され,人工培地が完成された。これらの知識を基礎として,体外受精の研究は発展し,その臨床応用として,試験管ベビーの成功がもたらされた。
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