特集 アイソザイム検査
II.各論
29 ペプシノゲン
景山 節
1
Takashi KAGEYAMA
1
1京都大学霊長類研究所
pp.1403-1407
発行日 1988年10月30日
Published Date 1988/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913817
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ペプシノゲンのアイソザイム
ペプシノゲンは胃の消化酵素ペプシンの前駆体である.脊椎動物で胃の分化とともに出現したもので,細胞内リソソームのカテプシンDあるいは類似酵素に由来するものと考えられる.胃の粘膜で多量に生合成され,胃液内に分泌される.胃液は塩酸を含んでおり,その低い酸性pHのもとでペプシノゲンはペプシンに活性化され,強い蛋白質分解活性を発現することになる.胃の粘膜で合成されるペプシノゲンの一部は血液内に分泌され,さらに尿中に排泄される.血清中のペプシノゲン量は胃での合成量をよく反映し,胃の活動状態と密接に関係している.血清ペプシノゲンを定量することにより胃の異常を検出しようとすることは,その簡便性,有用性からおおいに普及させるべきものである.
ペプシノゲンあるいはペプシンは多くのアイソザイムの総称である.ペプシノゲンに対してはアイソチモーゲンというほうがより正確と思われるが,ここでは便宜上アイソザイムと呼ぶ.図1のように分類される.1〜7の番号による分類法は1969年にSamloffにより確立された寒天電気泳動によるものであり,ヒトペプシノゲン分類の基本といえる1).Samloffはさらにこれらのアイソザイムを免疫交叉性から大きくI,IIの2群に分けている.生化学の論文ではこれらに対応したA,Cの命名法が主として用いられる.明らかなようにI,IIあるいはA,Cの分類法はなお複数のアイソザイムを含めたものである.
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