特集 アイソザイム検査
II.各論
30 ホスホフルクトキナーゼ
山﨑 知行
1
,
中島 弘
1
,
河野 典夫
1
,
垂井 清一郎
1
Tomoyuki YAMASAKI
1
,
Hiromu NAKAJIMA
1
,
Norio KONO
1
,
Seiichiro TARUI
1
1大阪大学医学部第二内科学教室
pp.1409-1413
発行日 1988年10月30日
Published Date 1988/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913819
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ホスホフルクトキナーゼ(PFK)はヘキソキナーゼ(HK)(肝などのグルコキナーゼ(GK)を含む),およびピルビン酸キナーゼ(PK)とともに,生命維持に欠くべからざる代謝経路である解糖系の律速段階を触媒している.これら三者はいずれも,生理的な条件下では非可逆的に解糖反応のみを触媒する点で解糖系全体のキーステップとなっている.最近の分子生物学の進歩に伴い,糖代謝酵素の遺伝子レベルでの調節機構が次々と解明されつつある.代謝学,酵素学に一つの新しい流れが生じてきたこれら一連の経緯は,別の総説に述べたとおりである1).
インスリンの糖代謝に対する作用としては,筋肉,脂肪細胞などにおける細胞内へのグルコース輸送の促進とともに,主として肝臓における,細胞内の解糖促進作用が重要である.最近の知見によれば,上述の3酵素のうちGK,PKではインスリンにより肝でのそれらのmRNAの転写が促進され,その結果,酵素蛋白量を増加させ,解糖促進を実現している.一方,PFKについては現在のところこのような現象は知られておらず,むしろフルクトース2,6-二リン酸に代表されるようなアロステリックエフェクターによる複雑な調節が活性制御機構として重要であると考えられている1).
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