こぼれ話
初心忘るべからず
藍沢 茂雄
1
1東京慈恵会医科大学・病理学
pp.1354
発行日 1987年10月30日
Published Date 1987/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913490
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30年近く前のことになるが,私が病理学教室に入って初めての年のことである.
たまたま,後腹膜の腫瘍で死亡された男性の病理解剖をさせていただくことになった.それは広汎に後腹膜を占拠する出血,壊死の強い腫瘍で,多数の肺転移もあった.型どおり剖検を終わり,顕微鏡標本を作り,検鏡した.当時,新人の1年目には将来研究室を主宰するときのために,自分自身で標本を作るのが常であった.ところが,その腫瘍が男性にあるまじき絨毛癌とそっくりの像を呈しているではないか.学生時代あまり真剣に勉強しなかったせいばかりではなく,自己弁護をすれば男性に絨毛癌ができるなどということは教科書には載っていなかった時代なのである.
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