こぼれ話
糸球体のない腎生検
重松 秀一
1
1信州大学・病理学
pp.1368
発行日 1987年10月30日
Published Date 1987/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913493
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
腎生検は一部は尿細管や間質の病変を知る目的でなされるとしても,臨床医からの大部分の要望は糸球体障害の存在の有無とその程度を知ることである.したがって,光顕用に染めあがってきた腎生検標本を見るとき,糸球体の数が多ければ多いほど,われわれ病理医はより信頼性の高い組織診断ができるとありがたがる.糸球体は1個でも診断がつくアミロイドージスや膜性腎炎などの例もあるが,まったく糸球体がないとなると結果的に病理医の存在価値はきわめて低いものになってしまう.そんな実態は頻回では困るが,ないわけではない.
現在,腎生検は3種の神器ならぬ三つの処理法が広く行われているので,光顕用のブロックを全部切っても標本に糸球体がないとなると,電顕用,蛍光抗体用の材料に期待をかける.電顕用のエポン包埋標本のほうに糸球体があれば,トルイジンブルー染色でも十分な情報が得られる.凍結させた標本をクリオスタットで切ったあとの残りの腎組織を解凍後固定して光顕標本にしても,ある程度の判定は下せるものである.
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.