特集 生検の進歩
I 臓器別生検
i 組織診
2 肺
北川 正信
1
Masanobu KITAGAWA
1
1富山医科薬科大学医学部病理学第1講座
pp.1176-1182
発行日 1987年10月30日
Published Date 1987/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913448
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はじめに
「肺生検(lung biopsy)」という表現は,広狭両様の意味で使われている.広義には気管支壁,肺実質—呼吸細気管支以遠の肺胞領域,さらには胸膜をも対象とする,肺という臓器に関する生検のすべてを包含するものであり,狭義には瀰漫性肺疾患の診断を主な目的とする肺実質の生検である.従来,前者の意味で呼ばれていた肺生検業務の中で,最近,経気管支肺生検(transbronchial lung biopsy;TBLB)がその比重を高めてきたために,後者の意味での使われかたがより一般的となってきている.これは気管支ファイバースコープの改良と普及とともに,難治性の瀰漫性肺疾患の増加ないしそれへの関心の高まりによってこの10年余りの間に生じてきた現象である.その意味では,本特集号の意図する「生検の進歩」の大きなものは,肺に関する限り病理側よりはむしろ臨床側にあったというべきで,ことに気管支ファイバースコープの開発・改良のために払われたわが国関係者の努力は,国際的にも高く評価されているところである.そこで病理側に求められる課題は,このようにして得られやすくなった気管支生検(bronchial biopsy;BB)の材料,あるいは肺組織の材料からどのようにしてよい顕微鏡標本を作り,より多くの情報を得るか,ということになる.
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