今月の主題 注目のウイルス・リケッチア感染症
総説
ウイルス感染症診断法の進歩
皆川 洋子
1
,
森 良一
1
Hiroko MINAGAWA
1
,
Ryoichi MORI
1
1九州大学医学部ウイルス学教室
pp.738-745
発行日 1987年7月15日
Published Date 1987/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913363
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はじめに
感染症の実験室診断は,①病原体の分離・同定(病原体の存在の証明)と,②血清学的診断に大きく分けることができる.現在,わが国では一般臨床において,細菌検査室による病原菌の同定および薬剤感受性試験の結果が,患者の治療方針の決定上おおいに参考にされているのに比べ,ウイルス検査においては一部の検査室を除いて②の血清学的検査が主体であり,検査室からの報告が治療方針を左右する機会はまだ少ない.
しかし,高力価のインターフェロンやacyclovir(商品名ゾビラックス)・ara-A(商品名アラセナA)が本邦でもすでに市販され,欧米ではrivavirinやazidothymidineなどが認可されるというように,ウイルス特異性の高い抗ウイルス薬の本格的な臨床応用の時代を迎え,従来より迅速で正確なウイルス学的病因診断の必要性が増している.また,薬剤耐性ウイルスが問題になれば,分離したウイルスの薬剤感受性試験が必要となることも推測される1).
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