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1.はじめに
ヒトパレコウイルス(human parechovirus;HPeV)はピコルナウイルス科パレコウイルス属〔Genus Parechovirus:par(a)=傍,echo=エコー〕に分類される1本鎖のRNAウイルスである.同ウイルス科には,他に小児麻痺の原因となるポリオウイルスや無菌性髄膜炎,手足口病,ヘルパンギーナの原因となるコクサッキー,エコーウイルス等が属するエンテロウイルス属,呼吸器疾患の原因ウイルスが属するライノウイルス属,A型肝炎の原因ウイルスが属するヘパトウイルス属,胃腸炎患者から検出されたアイチウイルス1)が属するコブウイルス属のほか,カルヂオウイルス属(脳心筋炎ウイルス等),アフトウイルス属(口蹄疫ウイルス),エルボウイルス属,テッショウイルス属等,多数の重要な動物ウイルスが属している.
パレコウイルス属は,ヒトパレコウイルス(HPeV)とユンガンウイルス(Ljungan virus;LV)の二つの種から成る.HPeVは1956年に小児夏季下痢症の病原体として分離されたエコーウイルス22型およびエコーウイルス23型2)がウイルス学的特徴から1999年にパレコウイルス属として独立し,ヒトパレコウイルス1型(HPeV-1)および2型(HPeV-2)と改名された3~11).主に小児の胃腸炎や呼吸器疾患患者から分離される.現在のところ6種類の血清型/遺伝子型が存在し,世界各国から検出報告がなされているが,わが国からはHPeV-1とHPeV-3の報告が多い.LVは,1999年に報告された野ネズミbank vole(Clethrionomys glareolus)から検出されたウイルス12)で二つ以上の血清型が知られている.2007年には子宮内死亡胎児(intrauterine fetal death;IUFD)の脳と胎盤から免疫組織化学的にLV抗原の存在が報告され,人獣共通感染症の可能性も示唆されている13).
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