Modern Therapy ウイルス感染症治療に必要な基礎知識
ウイルス感染症の防御機構
森 良一
1
,
林 嘉信
1
Ryoichi Mori
1
,
Yoshinobu Hayashi
1
1九州大学医学部ウイルス学教室
pp.561-565
発行日 1981年8月10日
Published Date 1981/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206468
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ウイルスを含めた多くの微生物に対する感染抵抗性は,非特異的防御機構と特異的防御機構とに大別して考えることができる。非特異的感染防御機構は,生体が本来有している自然抵抗性とほぼ同義であり,生体にあるウイルスが初めて侵入したときに働く機構である。しかし,感染からの回復,再感染の防御など,獲得抵抗性の本態となるのは特異的感染防御機構であり,これは免疫の成立により得られる。
特異的防御機構を構成する免疫担当細胞の中で,Tリンパ球は細胞性免疫,Bリンパ球は液性免疫を担っているが,ウイルス感染に際しBリンパ球単独で産生される抗体は限られており,多くはヘルパーとしてのTリンパ球の協力が必要である。また,サプレッサーTリンパ球はBリンパ球による抗体産生を抑制する。さらに,抗体依存性細胞媒介性細胞障害機構(ADCC)では,抗原特異的結合の担い手は抗体であるが,エフェクターはリンパ球系細胞である。このように抗体による液性免疫とTリンパ球による細胞性免疫は,相互の関連のもとに機能しているので完全には両者を区別し難いが,ここでは,ウイルス感染症の防御機構を非特異的機構と特異的機構に大別し,さらに後者を液性免疫と細胞性免疫に分けて述べることにする。
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