糖鎖の分析法・3
糖蛋白質糖鎖の機能とその癌性変化—1.γ-グルタミルトランスペプチダーゼ
山下 克子
1
Katsuko YAMASHITA
1
1神戸大学医学部第1生化学教室
pp.302-309
発行日 1987年3月15日
Published Date 1987/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913276
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はじめに
糖蛋白質の糖鎖は種々の生物学別識定機構に関与していることが知られるようになって久しいが,最近,臨床化学の分野においても注目を浴びている.それは,癌診断薬として登場したCA 19-9,CSLEX-1,CA-50,Sialyl SSEA-1などのモノクローナル抗体の抗原決定基が糖鎖であることが明らかにされたからである.一方,これらのモノクローナル抗体はいずれも癌細胞そのものを抗原として得られたものであるにもかかわらず,癌細胞を抗原として得られる抗体は無数にあり,必ずしも癌細胞の産生する糖蛋白質糖鎖の主要な癌性変化を反映しているとは限らない.事実,NIHのGinsburg博士らは抗原決定基の同定を依頼された百二十数種のモノクローナル抗体の約半数は,そのエピトープがX-抗原決定基であったことを報告している.
1970年代初頭になされた培養細胞をウイルスで悪性化させた場合に形質膜の糖蛋白質糖鎖が変化するという研究以来,形質膜糖鎖の癌性変化に関する多くの報告がある1).著者らは幼若ハムスター腎細胞株をポリオーマウイルスで悪性化させた場合の,形質膜の糖蛋白質糖鎖の構造変化とそれに関与する酵素の変化を調べた.すなわち,ヒドラジン分解法を中心とした微量分析法を駆使して糖鎖の構造変化を明らかにし2),さらにその変化が糖転移酵素の変化によるものであることを示すことができた3).
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