注目される腫瘍マーカー・4
γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γGTP)
谷口 直之
1
,
宮沢 伸子
1
,
桝谷 誠三
1
,
松田 幸彦
1
,
杉山 俊博
1
,
木下 憲明
1
Naoyuki TANIGUCHI
1
,
Nobuko MIYAZAWA
1
,
Seizo MASUTANI
1
,
Yukihiko MATSUDA
1
,
Toshihiro SUGIYAMA
1
,
Noriaki KINOSHITA
1
1大阪大学医学部生化学教室
pp.883-888
発行日 1987年8月15日
Published Date 1987/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913388
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腫瘍マーカーとして知られているものの多くが,糖蛋白質や糖脂質であることと相まって,糖鎖の腫瘍マーカーとしての意義が重要視されてきた1,2).糖鎖を持つ糖脂質,糖蛋白質の中で,糖脂質は①糖鎖構造が比較的単純であること,②疎水性のセラミドが結合していること,③糖鎖がハプテンとして抗原性を強く持つなどの理由で,モノクローン抗体やポリクローン抗体が作製しやすい.したがってそのエピトープの解析も容易であり,よく解析されている.一方,糖蛋白質性の腫瘍マーカーの場合には糖鎖構造が複雑であり糖鎖が不均一であることも手伝って解析が困難である.また,抗原性は蛋白質部分に強い.特にアスパラギン結合糖鎖の抗原性は弱いため,糖鎖を認識する抗体は作製しにくい.
γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γGTP)は,典型的なアスパラギン結合糖鎖を持っている.したがってポリクローン抗体やモノクローン抗体を作製しても,いずれも蛋白質側に対する抗体ができることが普通である.したがってモノクローン抗体を作製する場合でも,糖鎖を認識する抗体を得るには,かなりの創意くふうが必要である.本稿では,γGTPのモノクローン抗体を作製するにあたり,スクリーニング法をくふうして糖鎖に対する抗体を作製した例と,免疫する抗原をくふうして糖鎖に対する抗体を作製した二つの例を紹介する.
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