特集 先端技術と臨床検査
Ⅱ顕微鏡
3電子顕微鏡—1エネルギー分散型X線分析装置
水平 敏知
1
Vinci MIZUHIRA
1
1東京医科歯科大学難治疾患研究所超微構造部門
pp.1239-1247
発行日 1986年11月1日
Published Date 1986/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913129
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●はじめに
電子顕微鏡で見える細胞の超構造の像は,電子線に対する超構造部の構成元素の構成密度,元素の種類(原子番号)に依存してそれぞれの構成元素の電子線に対する吸収や散乱の差などの要素によって支配される.したがって,低コントラストの生物切片試料は通常,原子番号の高い鉛やウランの塩類で電子染色を施す.さらに試料を照射する電子線が試料に当たると,その局所の個々の構成元素に特有の特性X線といわゆるバックグラウンドに相当する白色X線を出す.そこでX線の検出器を試料室のごく近くに装置することで,電顕像を観察・記録すると同時に,必要微小部の構成元素の種類(定性),さらに条件の吟味によっては定量値を求めることが可能となった.このように主として透過電子顕微鏡に微小部X線分析装置,さらにミニコンピューターや透過走査像装置を装備した電子顕微鏡を<分析電子顕微鏡>(analytical electron microscope;AEM)またはTotal System AEMなどと呼ぶことが多い(分析電顕,AEM)(図1).
生物医学的領域で筆者が応用を考え,分析電顕を初めて日本電子(株)と開発したときはまったく文献がない状態であったので,約1年余の間はすべて基礎的実験データを得るために費やされた,今日ではかなり普及しているが,真に基礎から理解し,みずから操作してデータを得ている人は少ない.
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