今月の主題 唾液と汗
技術解説
唾液の臨床化学
奥田 清
1
Kiyoshi OKUDA
1
1大阪市立大学医学部臨床検査医学教室
pp.943-951
発行日 1986年9月15日
Published Date 1986/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913059
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唾液を試料とする臨床化学検査の目的はおおむね三つの範疇に分けることができる.すなわち①唾液腺自体の機能を検査するため,②歯周疾患や歯の齲(う)蝕の予測,あるいは経過の観察のため口腔環境を把握しようとする検査,③従来の血液に代わって,無侵襲で,即時性の高い試料として生体内代謝動態のモニタリングに用いる検査,などである.①については,唾液腺で舎成され主としてエキソサイトーシスで分泌される成分をマーカーとすることが多く,③では血液中から限外濾過や拡散によって唾液へ移行する成分を利用することが多い.②では口腔の内外からの由来成分を考慮しなければならないため複雑である.いずれにしても,これらの検査の意義を十分理解するためには,唾液腺構造,および唾液の分泌機序についての基礎的な知識が必要であり,もちろん臨床的意義についての知識も要求される.
このため本稿では,唾液腺の構造と機能,特に分泌機能についてその大略を述べた後,前述した唾液を用いる臨床化学検査について,三つの範疇のそれぞれに実例を挙げながら解説を加えてある.
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