シリーズ・癌細胞診・5
卵巣癌—子宮腔内吸引法
蔵本 博行
1
,
加藤 良樹
1
,
増田 恵一
1
,
大野 英治
2
,
今井 忠朗
2
Hiroyuki KURAMOTO
1
,
Yoshlki KATO
1
,
Keiichi MASUDA
1
,
Eiji OHNO
2
,
Tadaaki IMAI
2
1北里大学医学部産婦人科
2北里大学病院病理部細胞診
pp.567-570
発行日 1985年5月15日
Published Date 1985/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912570
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
近年,本邦においても卵巣癌の増加が指摘されているものの,その診断には少なからず問題が残されている.卵巣腫瘍を,治療前に良性か悪性かを含めて形態学的に診断することができれば,その後の治療方針ならびに予後の判定に有意義である.卵巣癌の非観血的形態診断法としては,腹壁やDouglas窩からの穿刺吸引法,また両者の洗浄法などのアプローチが試みられている.しかし,癌研増渕式吸引チューブを用いた子宮腔内吸引細胞診を行うことも有用な方法である.本法は,疼痛など侵襲も無く簡便に行えることから,卵巣癌の診断法としてまずやってみるべき方法であろう.
1979年1月から1983年1月までの間に北里大学病院産婦人科で治療した原発性卵巣癌57例中47例(82.5%)に子宮腔内吸引細胞診を施行したが,そのうち13例(27.7%)を本法で卵巣癌と診断しえた(加藤良樹,他:日臨細胞誌,22,696〜702,1983).手術時も含めた腹水細胞診で結果的に陽性であった症例のうちでは,41.2%が診断されたことになる.すなわち,子宮内に病巣が無くても,腹水中に癌細胞が遊離している場合には,子宮腔内に流れ着いて診断されるものと判断される.したがって,細胞採取に当たっては吸引法で行うことが肝腎である.なお,卵巣癌のうち吸引細胞診で捕えられやすい癌種は,漿液性,低分化,ムチン性,類内膜の各腺癌の順であった.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.