指標
子宮頸癌とヘルペスⅡ型ウイルス
蔵本 博行
1
,
加藤 芳克
1
,
西田 正人
1
,
上坊 敏子
1
,
田口 明
1
,
大野 英治
2
,
鶴野 和則
2
Hiroyuki Kuramoto
1
,
Eiji Ono
2
,
Kazunori Tsuruno
2
1北里大学医学部産婦人科学教室
2北里大学医学部細胞診
pp.351-359
発行日 1976年5月10日
Published Date 1976/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205414
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Rawlsら(1969)1)が,子宮頸癌患者に単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV—Ⅱ)中和抗体の保有率の高いことを報告して以来,このⅡ型ウイルスによる子宮癌発生の可能性が強く示唆されている。
動物腫瘍ウイルスの研究に比し,人癌の病因に,明らかに関与しているウイルスは未だ発見されていないし,その研究はようやく端緒についたばかりである。このような現状にあつて,ヘルペスウイルス群は人癌との関連性において,最も疑々深いといつてよく,ほとんど研究はこれらウイルス群に集中している。ヘルペスウイルス群には,単純ヘルペスⅠ型やⅡ型のほか,帯状疱疹ウイルス,サイトメガロウイルスおよびEBウイルスがある。このうち,EBウイルスはバーキットリンパ腫,上咽頭癌や白血病との因果関係を持つものとして,衆目を集めている。EBウイルスに比べ,単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV—Ⅱ)は人癌の発癌因子として決定的段階には至つていないとはいえ,血清疫学的研究(表1)に加え,試験管内癌化2,3)や癌細胞DNA中にウイルス由来のものが組み込まれている4)などから,子宮頸癌とますます密接な関係になりつつある。
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