今月の主題 腫瘍マーカー
カラーグラフ
腫瘍患者のアイソザイム
中山 年正
1
1虎の門病院生化学科
pp.1008-1010
発行日 1984年9月15日
Published Date 1984/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912287
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癌患者の体液アイソザイム像が多様であるように,それをもたらす原因もさまざまである.すなわち,腫瘍浸潤による血管・胆管の閉塞,細胞膜透過性変化,細胞破壊,あるいは癌による酵素の過形成などの癌および周辺組織からの正常酵素の遊出はいわば酵素の量的変化であるが,癌のLDH M型偏倚のような質的変化もある.これはGreenstein (1954)の第一法則"癌組織の性質は胎児組織のそれに近づく"で説明される.これにも,元来そのアイソザイムが正常組織でも多量に含まれているもの,あるいは,損傷組織の再生・修復時に癌と類似の偏倚をするもの,のために特異性の欠けるものと,胎児または胎盤にのみ存在し,成人でみられないものが再び現れるという特異性の高いものがある.後者は,癌の母細胞への脱分化,分化の逆行,あるいは調和の無い脱分化という意味で"異分化"と言い,この種のアイソザイムは腫瘍特異性が高いので腫瘍マーカーに挙げられている.
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