今月の主題 循環器〈生理検査〉
検査と疾患—その動きと考え方・76
Marfan症候群
内海 仁司
1
,
羽里 信種
1
,
藤原 直
2
Jinji UTSUMI
1
,
Nobutane HAZATO
1
,
Sunao FUJIWARA
2
1越谷市立病院循環器内科
2順天堂大学医学部内科(循環器)
pp.401-408
発行日 1983年4月15日
Published Date 1983/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911848
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Marfan症候群とは
1896年,パリの小児科医Marfanが,5歳の女児で異常に長い四肢,くも状指趾などの骨格的異常について記載したことに始まる.本症候群は常染色体優性遺伝形式をとる中胚葉系組織の代謝異常疾患で,V.A.McKusickはEhlers-Danlos症候群,Hurler症候群らとともに先天性結合織異常疾患という概念に含めていたが,いまだその病因には不明な点が多々ある.主要症候としては骨格系,眼科的および心血管系異常があるが,時に心血管系異常により死亡することがある点から,循環器領域で特に注目されている疾患である.
骨格系異常としては,アメリカ大統領Lincolnに代表されるように,細長型で,長身で四肢が長く(手・身長比11%以上,足・身長比15%以上),下節(恥骨—足底)が上節(恥骨—頭頂)より長いのが特徴である.また両手を広げたarm spanが身長より長く,くも状指趾を呈する.中手骨指数(me-tacalpar index.第2指〜第5指における中手骨の長さ/中手骨中点の幅の平均)は8.5〜10.5と正常人の5.0〜8.0より大とされている.関節の過伸展のため習慣性脱臼を起こしやすく,手を握らせたとき拇指が尺側より突出する拇指徴候や,手首を自分で握らせると拇指と第5指が重なり合う手首徴候が,高率に認められる.
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