Senior Course 血清
—最新の免疫学的検査法—免疫グロブリンの一次構造
冨永 喜久男
1
1九大医療短大部
pp.332-333
発行日 1975年3月15日
Published Date 1975/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542908920
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ヒト血清中には構造の異なる多種類の抗体が存在するが,抗体の大きな生物学的特徴は"特異性",すなわちある1種の抗原とは反応するが他種の抗原とは反応しない性質である.そして現在の分子免疫学の最大の課題はIgないし抗体の構造上のこの多様性がどのような遺伝的支配を受けるのか,その多様性が特異性といかに関係するかの解明である.このためには何よりも構体分子の一次構造,すなわちアミノ酸配列が調べられなければならない.しかし,ある特異性を帯びた抗体分子を,この種の研究が可能なほど大量に分離することは不可能であるので,骨髄腫やマクログロブリン血症の患者の血清や尿にみられる,いわゆるM成分(BJタンパクを含め)がかわりに用いられてきた.これらM成分のほとんどは抗体活性を有しないが,単一種類のIgを大量,純粋に入手できるためである.
1960年代の前半はこれらのタンパクのポリペプチド鎖ないし"フラグメント"の構造に関する,いわばマクロの研究が主であったが60年代の後半からはアミノ酸の配列,いわばミクロの構造が盛んに調べられつつある.1966年にはBJタンパク(Ag)──κ鎖の1種──214個の,また1969年にはIgG1骨髄腫タンパク(Eu)の(660×2)個のアミノ酸全構造が定められた.
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