Senior Course 血液
—検査室からみた血液疾患の特徴—再生不良性貧血
松原 高賢
1
1熊大病院中検部
pp.330-331
発行日 1975年3月15日
Published Date 1975/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542908919
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1.再生不良性貧血とは
"再生不良性貧血の定義は"と問われると答えに窮する.下そうにも定義がないからである.いま,一つの疾患の概念が確立される過程を考えてみよう.鉄欠乏性貧血を例にとると,貧血患者の中には赤血球小さく,大小不同はなはだしく,ギムザ染色の染まり淡く,鉄剤によく反応するもののあることが以前から知られており,一つの独立した貧血の型ではないかと老えられ,低色素性貧血と名づけられていた.この段階で"低色素性貧血の定義は"と問われたら,診断に役立つ特徴的所見──診断基準──を列挙して,こういう所見を備える症例を一括して低色素性貧血と呼ぶ,と答えるほかはない,しかし定義とは,その疾患に共通に存在する本質的なもの──診断基準に掲げた所見を呈するに至らない軽症の症例にも存在すべき──を指摘することであるから,診断基準は正しい意味の定義ではない.
その後低色素性貧血患者の血清鉄低く,諸臓器の鉄分少ないこと,動物を鉄不足の食事で養うとヒトと同様な貧血の起こることから,本貧血が体内の鉄不足によって発生することが明らかになり,ここに鉄欠乏性貧血の概念が確立した.この段階に達して初めて正しい意味の定義を下すことができる.すなわち,"鉄欠乏性貧血とは体内の鉄の不足によって発生する貧血である"と.
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