Senior Course 血液
巨赤芽球のみられた時
中島 弘二
1
1山口大第3内科
pp.468-469
発行日 1974年4月15日
Published Date 1974/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542908523
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正常骨髄において幹細胞からエリトロポエチンの刺激により分化した赤芽球は分裂をくり返し,形態学的にも,機能的にも分化成熟し,やがて核は濃縮し脱核し網赤血球として末梢血に供給され,末梢血赤血球数は保っている.このように末梢血の正常赤血球数を維持するためには,骨髄より十分な赤血球が供給されることが必要であるが,骨髄においては赤芽球より分裂増殖および成熟が順調に行われて初めて正常赤血球となる.巨赤芽球性貧血は,この赤芽球の分裂成熟過程において,核の成熟障害により赤芽球がスムースに赤血球とならないために起こる貧血である.骨髄での細胞分裂,そのための核分裂の前段階としてのDNA複製は,正常造血に必須の過程である.DNA複製にはDNA合成系の酵素による核酸前駆物質の合成が必要であり,ビタミンB12や葉酸がその生合成に関与している.ゆえに,ビタミンB12または葉酸の欠乏によって核の成熟が障害されて巨赤芽球症を引き起こす.胃内因子の分泌異常によるビタミンB12吸収障害によって起こる巨赤芽球性貧血は悪性貧血としてよく知られている.
ビタミンB12欠乏および葉酸欠乏によらなくても,他の原因により核酸合成,核の成熟が障害されれば,巨赤芽球症が引き起こされる.
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