追悼文
Tiselius教授の死を悼んで—‘タンパク質の分離’を貫く
平井 秀松
1
1電気泳動学会
pp.55
発行日 1972年1月15日
Published Date 1972/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907486
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Arne Tiselius教授は有名なティゼリウス電気泳動法のそのTiseliusである.今日,臨床検査に欠くことのできない電気泳動法のその大元の創始者であり,血清タンパクをアルブミン,α—,β—,γ—グロブリンに分画,命名したその彼である.1969年10月あんなに元気で初めての日本を訪れ,3週間あまりの滞在を心から喜んで帰っていかれた教授の追悼を,今こうして書かねばならぬことを本当に悲しく思う.
彼をかくも強く私に印象づけたのは,彼の非凡な業績よりはむしろ透徹したその人となりなのである.彼こそは人間とは何かということを本当に知っていた人であった.それゆえに彼の謙譲は,真理の前に人がいかに小さなものであるかを体でもって体得したその謙譲さであった.生涯を1つのことに集中しえた人のみが到達しうる境地にいた人である.
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