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はじめに
子宮頸癌検診は手法として細胞診が採用され,その普及により早期発見,早期治療の症例が増加することが知られ,また罹患率・死亡率の減少など,科学的にその有効性が示されている有用な検診である.わが国においては戦後の生活環境の改善や衛生観念の向上,全国規模での子宮頸癌検診の施行などにより,子宮頸癌の死亡率が著しく減少してきた.しかしながら現在でも上皮内癌の罹患率は減少傾向にはないこと,また20歳代,30歳代といった若年者での罹患率の上昇が懸念されている.したがって,子宮頸癌は過去の事象として無視することはできず,検診の存続を含め,今後とも対策が求められ続ける疾患である.
21世紀を迎えるに当たり,医療に対する考え方が変貌し,1つのサービスとしてその質が問われ,コストが問われるようになった現実は誰もが認めるところである.患者自身が主体的に医療サービスを取捨選択する時代である.子宮頸癌検診も地方自治体がその実施に関して意志決定することとなった(1998年より).こうした状況を勘案すると,今まで施行してきた子宮頸癌検診を,「誰が主体となって」,「誰を対象に」,「どのような方法で行われ」,それによって「どのような効果があるのか,あるいはないのか」といった点に関して再度立ち止まって確認しておくことが,この医療サービスを提供する側にも享受する側にも不可欠と考えられる.ここでは子宮頸部擦過細胞診を用いた子宮頸癌検診の有用性の評価について久道班による「厚生省がん検診の有効性評価に関する研究班」(1998)の報告1)を中心に述べ,また現在,子宮頸癌検診の置かれた社会的な位置づけについて概説し,今後求められると考えられる課題についても触れてみたい.
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