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第41回日本臨床細胞学会総会は,慶應義塾大学医学部産婦人科教授である野澤志朗会長のもとで,2000年5月31日から6月2目の会期で開催された.内容は招請講演3題,特別講演1題,要望講演2題,教育講演2題,シンポジウム2題,ワークショップ4題,一般講演339題とスライドセミナーであり,いずれも20世紀最後の総会にふさわしいものであった.
"細胞診の自動化―現状と将来"と題したシンポジウムは,細胞診における黒船の再来として危機意識が高まりつつある問題を取り上げたものである.細胞診の自動化は21世紀後半に築かれたわが国における細胞診断学の体系を根底から揺さぶるもので,本総会で最も注目されたテーマである."1.細胞診自動化の最先端"では,田中昇先生が歴史的背景と現状を紹介され,現在ではmonolayer標本のみならず通常標本においても解析可能で,わが国においては検査企業での精度管理におけるrescreeningとして利用度が高まることを予測された.また,米国からは1995年に米国FDAの承認が得られているAutoPap(ThinPrepPapTest;TPPT)に多数例の子宮頸部擦過材料への応用例が報告された.そのうち,TPPT導入による不適標本の減少,異型細胞の検出率の増加を協調し,その有効性をアピールした.続いて,"2.本邦における細胞診自動化の方向性"と題し,わが国におけるAutoPap,AUTOCyteの導入成績およびThinPrepを用いたmonolayer標本と従来法を比較した成績が報告された.このセクションでは本紙面では紹介できないほどのさまざまな意見が出されたが,異型細胞をスクリーニングする点においてはFDAが承認した基準であればその精度は大方の支持が得られた感はある.しかし,Review Rateの適正な設定,人間と機械の作業分担率の明確化,責任の所在などの課題も残された.また細胞検査士側からは,liqid baseで採取された標本の細胞像が従来法とは異なる点が指摘された.筆者は本総会後に米国北東部地区の細胞検査士ワークショップに参加したが,そこではmonolayer標本とconventional標本における細胞形態の相違が主なテーマであった.既に米国ではmonolayer標本をスクリーニングするための認定制度(Cytyc社)があり,それは90点以上が合格という厳しいものであるが,ThinPrepを導入している施設ではその認定を受けた細胞検査士の就職が有利とのことで,わが国においてもその必要性が議論される時期はそう遠くはないであろう.
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