- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
Papanicolaou GNによって,細胞による診断方法の可能性が報告されてから70年が経過し,また,vaginal smearの染色法が発表されてから今日まで60年近い歳月が流れた.この間,固定・染色された細胞を人が顕微鏡を用いて検査(検鏡)し判定するという原則には変化がなかったが,細胞採取法や細胞収集法の開発,染色,封入の機械化から,最新の知見に基づく細胞形態の認識に至るまで,それぞれの分野で細胞診の基本的,技術的な進歩がもたらされてきた.しかしながら近年,細胞診自動化の装置の開発が進み,それが実用化の域に達すると,ついには細胞診の根本原則にも変更が加えられるようになり,いよいよ細胞診の世界にも新しい潮流が起こり,その流れは勢いを増して新しい世紀へ突入している.
細胞診自動化の究極の目的は機械的に最終判定を行うことにあろうが,そのような完遂型の装置開発にはこれまで著しい困難を伴ってきた.そこで画像解析に優れて連続作業が可能な装置と,判断能力に優れている人間とのそれぞれの長所を有効に生かして,実務的な細胞診断装置を開発するという方向に近年基本姿勢の転換が行われた.そこでは,悪性および異型細胞を拾い出すという過去の設計方針から,異常でない細胞を分別・除外するという方針に改められ,異常の可能性のある場合には,その検鏡を人に委ねられることになった.
1955年の米国CYTOANALYZERをはじめとして,いろいろな機器が開発発表されてきた.日本においても1960~1980年代細胞診断自動化研究班が活発に研究されていたが,実用化されたのは田中昇グループのCYBESTのみであった(表1).
このような細胞診自動化装置は,これまでの細胞診精度への疑問を背景に,米国で受け入れられ,既に1985に年Food&Drug Administration(FDA)の承認を得て,現在実用化の時代を迎えている.わが国においても,既に1980年代より導入され,現在一部の施設において実用化され使用されている.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.