特集 臨床検査の新しい展開―環境保全への挑戦
Ⅰ.地球環境の現状とその保全
5.環境汚染とアレルギー
安藤 正幸
1
Masayuki ANDO
1
1熊本大学医学部第一内科
pp.1231-1236
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904212
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はじめに
近年,アレルギー疾患の著しい増加が注目されている.その重要な要因の1つに環境汚染物質の増加がある.アレルギーの直接原因となる環境汚染物質としては,従来から,細菌,真菌,ダニ,昆虫,犬・猫のふけ,花粉などの有機塵埃やイソシアネート,ベリリウムなどの化学物質が知られている1).これらの抗原物質は,建築様式や生活様式の変化により居住環境に増加し,また,花粉症にみられるように植物生態系の変化により屋外環境に増加し,空気,水,食物を介して経気道的,経口的,経皮的に生体に侵入し,アレルギー性鼻炎,気管支喘息,過敏性肺炎,腸管アレルギー,アトピー性皮膚炎,などの各種アレルギー疾患を惹起する.例えば,わが国の気候ならびに居住環境に関連してみられる夏型過敏性肺炎2)や,最近増加しているすぎ花粉症はその典型的な事例である.
また,最近では,内分泌攪乱作用を持つ新たな環境化学物質(環境ホルモン)や化学物質過敏症(multiple chemical sensitivity;MCS)を引き起こす種々の環境化学物質が免疫・アレルギー系に及ぼす影響が問題となってきている.これらの新たな環境化学物質が,抗原ないしハプテンとして,直接的にアレルギーに関与しているとの確実な根拠は得られていないが,化学毒性,免疫毒性,あるいはその両者の作用機序を介して,免疫系に異常をきたし,間接的に,アレルギー疾患の病態に関与している可能性が議論されている3~5).
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