特集 環境リスク
農薬による環境汚染への対応
小澤 邦壽
1
1群馬県衛生環境研究所
pp.284-288
発行日 2010年4月15日
Published Date 2010/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101772
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農薬による環境汚染として,水,土壌,大気への汚染が考えられる.これらのうち,水系汚染については,農地やゴルフ場からの農薬の流出が河川水,地下水の汚染の原因となり得るものの,現状では日本国内で問題となるような深刻な汚染の報告は見当たらない1~4).一方,土壌については,有機塩素系の農薬(DDT,BHC,ディルドリンetc.)が過去に大量に使用あるいは投棄された事実があるが,生態系に影響を及ぼすほどの残留はないと考えてよい5).したがって農薬による環境汚染で残る課題は,大気(室内空気を含む)の汚染ということになる6).農薬の大気汚染の問題点はいくつかあるが,その1つに,有機リン系農薬の規制の問題がある.欧米先進国では有機リン系農薬の規制が年々強化されており,その大部分がすでに使用禁止となっている.これに対し,日本ではいまだに有機リン系農薬は,最も主要な殺虫剤として広く一般に使用されており7),現時点でわが国と欧米とでは有機リン規制に関して対照的な情勢にある.問題点のもう1つは,無線操縦の小型無人ヘリコプター(以下,無人ヘリ)を用いた高濃度の農薬散布という,わが国独自の方法による大気汚染源の存在である.
このようなわけで,本稿では「有機リン系農薬の規制」と「農薬の空中散布」の2つの問題点に焦点を絞って,日本の農薬汚染対策の課題を講じることとしたい.
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